設計/デザイン
交流が生まれる仕掛けがたくさん!
空き家を活用した「水戸宿泊交流場」の空間を建築家のオーナーが解説
01
土間:コワーキングスペース
寸法の実験
昔、投網屋さんの店舗部分であった土間は天井高が高くなっています。その空間を活用するために、上下で利用できる櫓造りにしました。上がり降りをする時に必ず利用する階段は、[一段の高さをテーブルとしても使える高さにする][段板に滞在できるように寸法を広めにとる][使っている人の横を通れるくらいのスペースを設定する]等の使い方を寸法で表現することで「ちょっとすいません」等の声掛けが生まれることを設計しました。一言声をかけたことがきっかけになり、次の関係へ広がることを期待しています。
02
居間:リビング/ラウンジスペース
仕舞う家具
日本の生活様式は、用途に応じた家具を空の空間に使う間出し、済んだら仕舞うという形式であったと考えられ、その仕舞うという行為が伴う空間と家具は日本的なミニマルデザインの要因にもなっているのではないかと推測しました。この建物の奥の部屋は増築された痕跡があり、最初は一間で家族が「仕舞い」ながら生活していたことが伺えます。現在は多様な人が利用する施設になり、いろいろな用途が想定できるところから、単体でも機能しいろいろな使い方に応じて形状を変形できる家具を作り、仕舞ったり出したりしながら滞在する空間にしました。又、仕舞うことを想定した家具は、スタッキングした際の見え方にもこだわりました。
03
寝室:ドミトリースペース
小さな町
客室のボックスは、一間前後の住居のようになっており、訪れた人はふとんしかないこの部屋に引っ越しってきて、時期が来たら旅立っていきます。宿泊室はそんな人たちの小さな町になっており、個々のボックスは障子建具で閉じられているのでプライベートな空間となっていますが、直接顔を合わせなくても、障子の明かりから生活の気配を感じたり、道や広場のような共通の動線で他の町民と会うことになります。各ボックスはその位置によって日の光の影響も違っており、滞在ごとに場所を変えればまた違う体験ができます。
04
庭/縁側:アウトドアスペース
拡張縁側
この建物の庭は、敷地と道路の間に高い塀と鍵のかかる門がありプライベート性が高く、そのため、外と中の中間領域である縁側を拡張したような空間となっています。この建物の縁側は、座ることを想定した高さとしては低く目線が下がり地面が近くなる為、より外を感じる体験ができる寸法で出来ています。その事から、庭にこの縁側を切り取り自由な場所へ持っていけたら面白いのではないかと思い、そのサイズを抽出し設計した「拡張縁側」を椅子としてデザインしました。好きなところに拡張縁側を持っていけば、思い思いの場所でその体験ができる仕組みです。
庭の奥には、小屋が元々ついており、しばらくほぼ手つかずでした。アーティストインレジデンスで来てくれたアーティストさんが展示空間として整えてくれ、今ではすっきりとした空間になっています。使いたい方が思い思いセッティングして自分の空間にしながら使っていただけたらと考えております。
来たことのある方もまだな方も、この文を読んでいただいたことで、新たな視点で滞在していただけるようになったのではないでしょうか。こちらで言語化できていない意図も、感想からお伺いする事もよくあり、その度に面白味と嬉しさを感じております!!!ぜひ現地で体験してみてくださいー
水戸宿泊交流場 オーナー
AN||AT[中村彩乃建築設計デザイン]
中村彩乃